ネタバレ感想「37セカンズ」|障害があろうがなかろうが、あなた次第よ

レビュー

映画について

37セカンズ

2019年製作/115分/PG12/日本・アメリカ合作
配給:エレファントハウス
監督・脚本:Hikari
協力プロデューサー:岩堀昭、岩堀恭一、柳本千晶
共同プロデューサー:淺見朋子 、 松平保久
シニアプロデューサー :土屋勝裕
プロデューサー・企画:山口晋、Hikari
撮影:江崎朋生、スティーブン・ブラハット
音楽:アスカ・マツミヤ
挿入歌:CHAI
美術:宇山隆之
編集:トーマス・A・クルーガー
録音:石貝洋
スクリプター:樽角みほり
サウンドデザイン:サンロック・チョイ
エグゼクティブプロデューサー:山形龍司、住友大祐、中瀬古優一
キャスティング:おおずさわこ
ヘアメイク:百瀬広美
助監督:二宮孝平
照明:三善章誉
ラインプロデューサー :小泉朋
VFXスーパーバイザー:小坂一順
制作担当:岡本健志
スタイリスト:望月恵
出演:佳山明、萩原みのり、板谷由夏、奥野瑛太、神野三鈴、熊篠慶彦、尾美としのり、渋川清彦、大東駿介、石橋静河、芋生悠、渡辺真起子、宇野祥平

出生時に37秒間呼吸ができなかったために、手足が自由に動かない身体になってしまった女性の自己発見と成長を描き、第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門で観客賞とCICAEアートシネマ賞を受賞した人間ドラマ。脳性麻痺の貴田夢馬(ユマ)は、異常なほどに過保護な母親のもとで車椅子生活を送りながら、漫画家のゴーストライターとして空想の世界を描き続けていた。自立するためアダルト漫画の執筆を望むユマだったが、リアルな性体験がないと良い漫画は描けないと言われてしまう。ユマの新しい友人で障がい者専門の娼婦である舞は、ユマに外の世界を見せる。しかし、それを知ったユマの母親が激怒してしまい……。主人公のユマと同じく出生時に数秒間呼吸が止まったことによる脳性麻痺を抱えながらも社会福祉士として活動していた佳山明が、オーディションで見いだされ主演に抜てき。母親役を神野三鈴、主人公の挑戦を支えるヘルパー・俊哉役を大東駿介、友人・舞役を渡辺真起子がそれぞれ演じる。ロサンゼルスを拠点に活動するHIKARI監督の長編デビュー作。

映画ドットコム

【予告編】

『37セカンズ』本予告

鑑賞したキッカケ

映画を年間200本以上見るほどに映画にハマったきっかけの一つが、TBSラジオで放送されていた「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル(通称;タマフル)」、そして現在放送中の「アフターシックスジャンクション(通称:アトロク)」の存在があります。その番組の映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」という、パーソナリティのライムスター宇多丸さんが映画について批評するコーナーが大好きなんです!そんな大好きな「ムービーウォッチメン」の今週(2020年2月21日(金))放送予定のテーマとなった映画が【37セカンズ】ということで鑑賞しました。

ごめんなさい。お恥ずかしいことに、コーナーの課題作品になるまで、本作の存在を知りませんでした(汗)。下ネタ満載のハリウッドコメディ映画が大好物なもんで、なかなか邦画に手が伸びなかったのです。

しかし、ムービーウォッチメンの次週課題作品の候補の中に一般推薦枠というのがあるのですが、【37セカンズ】を推すメールが過去最多レベルで届いたと聞き、それで一気に興味が湧き、観て来ました!
また、本作は、2019年の第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門にて日本人初の観客賞受賞という快挙と、国際アートシネマ連盟賞の二冠を達成されているんですね!!すごい!

あらすじ

(C)37Seconds filmpartners

主人公のマユは、出生後に37秒呼吸が止まっていたことにより脳性麻痺を抱えており、仕事も友人の漫画家のゴーストライターとして、”影”として生きている。母娘一人の家庭。声も小さく、小柄で内向的、体の心配もあってマユの母は過干渉なまでにマユを子供扱いする。友人からの薄情な扱い、過保護な母親に窒息しそうなマユは自立するためにアダルト漫画雑誌に作品を持ち込み。編集者に作品を見てもらうも「SEXの体験がない人のエロ漫画はつまらない」と一蹴されてしまうが、マユは自分を変えるための行動に出る。

感想 ※ネタバレ

まず、主人公マユを演じた佳山明さんは、本編のオーディションを受けて約100人の中から選ばれた映画初主演の新人女優さんです。佳山さん自身が脳性麻痺による障害を抱えており、監督のHikariさんが佳山さんと生活を共にし、お母さんへのインタビューなど、佳山さんのエピソードによって元の脚本からアレンジされたそうです。タイトルにもなっている「37セカンズ」は佳山さん自身が生まれた時に約35〜40秒呼吸が止まっていたという事実が元になっています。また、Hikariさんは障害を抱えた女性の映画を撮るにあたり、障害のない女優さんが演じることに違和感を感じ、主人公を障害のある方に演じてもらうに至ったそうです。

(C)37Seconds filmpartners

マユは、友人の漫画家のゴーストライターをしているんですが担当にも世間にも秘密にしているので、アシスタントとしての存在はおろか、サイン会などの表舞台にも出ることができない。外出を心配する母に「何かあったらどうするの」と怒られた時にマユが「私のことなんて誰も見てないよ」と言うんですね。友人から存在を隠され、利用され、世間の目には自分が写っていないのだと吐露するシーンに胸が締め付けられました。また、マユがサイン会にこっそり花を持って友人の応援に行くんですが、友人は目が合うも無視をするんです。渡しそびれた花束を家に持って帰り出迎えた母親に「ファンからもらったの」と渡すシーンがあるんですが、恐らく母親はマユがゴーストライターをしていると知らない。これをみて、私自身が子どもの頃、嫌なことがあっても親を悲しませないためについた嘘を思い出し、とても切なかったです。

(C)37Seconds filmpartners

母は、マユのことを本当に大切に思っており、心配するが故に、過保護を加速させます。マユが新しい経験をするために、マッチングアプリで男性と会ったり、ヘルスに行ったり、セックスワーカーの新しい友だちを作って行くことで、大人になって行く”マユ”を母はすぐに受け入れられないんです。化粧したり、可愛いワンピースを着たり。これってすごく普通のことなんですが、マユ自身もこれが母に受け入れられないと分かって、公衆トイレで顔を洗い着替えて家に帰るシーンが、自分の意思とは反して魔法を解くシンデレラのようでした。
それでもマユは、新しい友だちを頼り母から離れ、自分の出生と父の問題に向き合っていきます

(C)37Seconds filmpartners

最初、障害とその困難に立ち向かう感動映画なのかと思いました。もちろん、大変感動したのですが、それ以上にマユの立ち向かう困難というのが”私自身のものと同じ”ないしは”私たちと同じ”なのだということに気がつきました。「健常者」「障害」といった区別(あるいは差別)をすることが対コミュニケーションで全く意味のないことなのだと痛感しました。

Hikari監督自身、十代で渡米し、カメラマンとして活躍後、30歳で南カリフォルニア大学院(USC)映画芸術学部に進学し映画・テレビ制作を学んでらっしゃいます。劇中の「障害があろうがなかろうが、あなた次第よ」というセリフは、これまでたくさんの壁を乗り越えてきた監督からのメッセージだと感じました。

(C)37Seconds filmpartners

また、ディルドを買いに行くシーンなど笑えるシーンも多いので、肩の力を抜いて鑑賞できますよ。
本作は、ぜひ劇場で見ることをオススメします!

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